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学芸員コラムColumn

2017年11月5日展覧会#32 写しの魅力

 今回の特別陳列「高橋介州と加賀象嵌のあゆみ」を楽しむためのキーワードとして、「写し」が挙げられます。
 図案集「山本光一挙 美術展覧会出陳什器模図」のうちの一葉「仁清作 獅子香爐」の図は、明治23年に金沢の勧業博物館で開催された「美術展覧会」に出陳された野々村仁清の香炉を、江戸琳派の絵師である山本光一が摸写したものです。この図と、二代山川孝次《金銀象嵌獅子香炉》((公財)宗桂会蔵)がよく似ていることはかねてより指摘されていました(参考文献①)。山川孝次が実際に香炉を見ていたか、あるいは図案の方を見ていたかはわかりませんが、作品の前提、本歌として仁清の香炉があったことは確かでしょう。
 さて、高橋介州もまた、仁清の陶磁作品を金工に写した作品を残しています。《加賀象嵌雉香炉》(石川県七尾美術館(池田コレクション)蔵)です。これは一見して分かるとおり、当館の国宝の野々村仁清《色絵雉香炉》を摸したものです。高橋は、仁清の雉香炉を摸した作品をいくつか作っています。そのうちのひとつに付されたことばをご紹介します。

国宝中の逸品石川県美術館所蔵仁清色絵雉の香炉に倣った。
もとより象嵌という制限された技法で、また黒銅の黒と銀の白のみをもって上絵技法の自由さと赤、緑、黄、紫、紺青など色釉の華麗さをもつ原作には到底追従は許されないが、金属には金属のみのもつ簡素な持味がなければならない。うぬぼれだろうか。(高橋介州『日本の工芸』青柳書房、昭和39年より)

色数の制限された金属で、あえて色彩豊かな色絵の陶磁を写すという行為からは、高橋の金属という素材に対する深い愛着がうかがわれます。この他にも高橋の作品には、唐三彩馬やエジプトのアヌビス神像などを写したものが見受けられます。他素材の作品に想を得て、それを金属に写すという、高橋のひとつのやり方がみえてくるといえるでしょう。(中澤菜見子)

参考文献
①高橋介州『日本の工芸』昭和39年
②山崎達文「写すこと、倣うこと、模すこと 山川孝次の象嵌獅子香炉が語るもの」『宗桂会だより』第26号、財団法人宗桂会、平成22年

画像詳細(上から)
図案集「山本光一挙 美術展覧会出陳什器模図」のうちの一葉「仁清作 獅子香爐」
二代山川孝次《金銀象嵌獅子香炉》((公財)宗桂会蔵)
高橋介州《加賀象嵌雉香炉》(石川県七尾美術館(池田コレクション)蔵)

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