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学芸員コラムColumn

2018年6月4日その他【美術館小史・余話5】宮本三郎と開館記念展ポスター

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

開館記念展ポスター原画(宮本三郎筆)

 いよいよ美術館が完成して、開館記念展のポスターを制作することになった。当然誰に制作を依頼するかが課題となったが、当時県内外で活躍する石川県ゆかりの作家で、最も著名な人ということになると宮本三郎氏(1905〜74)であり、美術館の門出を飾るにふさわしい作家であるということで、宮本氏にポスターの原画作成を依頼することになった。そしてポスターには、山川庄太郎氏より寄附された、国宝の仁清の雉香炉をぜひ入れて欲しいとの要望も出された。
 依頼してからわずか20日後に、原画が出来上がって到着した。興奮して開いてみると、金沢城の石垣を思わせるようなモザイク模様のある円形をバックに、写実的に描かれた雉香炉が配されており、周囲の余白の部分は金彩色で埋められ、その上に開館記念展の名称や期日、それに美術館名と所在地の文字が書かれ、豪華な原画であった。この原画を見て、意見が大きく二つに分かれた。
  このままでよいとする意見と、ポスター図案として多少文字を含めて手を入れるべきだとする意見である。
 私も後者の考え方であった。後者をとる場合は宮本氏に了解を得る必要があり、その役を私が引き受けることになった。恐る恐る電話をかけると、宮本氏からは「私はポスター屋ではないので、おまかせします。」という答えが返ってきた。さすが洋画画壇のトップにある人だとつくづく思った。
 文字等は印刷活字体に訂正してポスターが出来上がり、好評であった。 この原画は今も美術館の収蔵庫に収められている。
  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第205号、平成12年12月1日発行)

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