今月の美術館だより
 第227号 平成14年9月1日発行
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 ●所蔵品紹介 124

  交霊術・HARP


  吉田冨士夫 
      昭和4年(1929)〜平成13年(2001)
 
   平成8年 1996
   第50回記念二紀展 第50回記念賞
   縦 180.3 横 225.7 (cm )
交霊術・HARP
   
   交霊のハープを奏でる霊媒師と呆然とした顔を私たちに向ける女道化師。その二者をペガサスの翼を持った人魚が繋いでいます。人魚の下には仮面が、そしてその奥には男の道化師が生気なくしゃがみ込んでいます。バックはこの世のものとは思えぬ奇怪な世界です。
 これまで作者はサーカスの道化師や手品師・催眠術師をテーマに描いてきました。それらの作品は淡く幻想的な色彩を基調にし、人物を取り巻く空間はある一定量に限られていました。しかし、本作では色彩はダイナミックな階調を持つシャープなものですし、空間はこれまでとは全く違う、此岸と彼岸とにまたがる広大なものです。

 作風の転換は数年前から始まっていました。時には画面一杯に巨大な顔を描き、作者独特のオブラートに包まれた柔らかな色彩はむき出しにされ、ひどく乾いてしまったと感じられたこともありました。本作はこうした実験の帰結といえましょう。大きな山を越えた作者の充足感が感じられます。

 さて、絵解きに戻りましょう。女の道化師は死んでしまった恋人、あるいは夫に逢うために、霊媒師に交霊を頼みます。すると奏でられたハープの音は人魚に変わり、男の魂を金の息吹で彼女の耳元に届けるのです。懐かしい声を聞いたその喜び、そして悲しみが、女道化師の相半ばする表情にうかがえます。

 本作は第50回記念二紀展出品作であると共に、作者の没年、遺作として第55回展を飾ることになりました。
       
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