タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-

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概要

かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。

24しん真ちゅう鍮ぎん銀ぞうがん象嵌うめ梅やなぎ柳もん文あぶみ鐙Stirrups, design of plum and willow, brass and silver inlay桃山-江戸17世紀鐙とは、馬に乗る際に足をかけたり、足裏を支えたりする道具である。本作のような金属製のほか、くらちからかわ木製のものもある。鞍の両側につるした力革にかけて使用する。はとむねえみ正面にあたる鳩胸や笑から底にあたる舌にかけてしんちゅうひらぞうがん全体に、真鍮と銀の平象嵌でしだれ柳と梅があしらわれる。平象嵌とは、象嵌のあとに研磨することで地金と文様の凹凸をなくし、平らにする技法である。本作では、象嵌された文様の上に梅の花のおしべや幹の皮の表現が細かに彫刻され、丁寧もんいたな仕事ぶりがうかがえる。上部の紋板(首状の部分)には飛沫をあげる高波が透かされており、統一された梅柳文様の中でアクセントとなっている。(AS)25かつくに勝国ぎん銀ぞう象がん嵌すい水しゃ車もんあぶみ鐙文銘加州住勝國作Stirrups, design of water wheels, silver inlay1681(天和元)年鳩胸から笑にかけて水車が銀で象嵌され、余白を蔓草文で埋める。細い曲線への象嵌は大変難しく、技術の高さがうかがえる。舌裏(底面)にも同じく蔓草文が施されるが、正面よりもやや拙い印象を受ける。隅には「天和元年三月日」とあり、制作年代がはっきりとわかる貴重な作品。紋板の正面には銀象嵌で「加州住勝國作」と銘がある。足裏を置く踏込は、加賀象嵌鐙には珍しく黒漆塗されている。加賀象嵌鐙とは加賀で制作された鐙であり、特色として鉄地に象嵌が施される。江戸時代、加賀象嵌製品は当地の名物として広く知られていた。特に鐙は、藩主から幕府への献上品や大名への贈答品として、全国からの評判も高かったという。(AS)16