タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-

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概要

かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。

30よね米きん金ざわ沢ぞう象ひろ弘がん嵌まさ正きり桐ず図か花びん瓶Vase, design of paulownia, gold inlay1909(明治42)年頃彫金青銅による器体の口縁に金象嵌で花紋をめぐらし、たかにく腰までにすっとすぼまる胴には、立体的な高肉象嵌で桐を表している。葉脈などに毛彫、葉の裏側と幹に虫食い風に点彫を施しており、少し枯れた質感を見事に表現している。明治期殖産興業の大きな波が一段落し、装飾過剰の傾向が落ち着く明治後期の流れを反映している。しろがね米沢家は前田家の御用を勤め、代々白銀屋と称した。米沢は輸出銅器を手がけた銅器会社で職工棟取を務め、セントルイス万国博覧会(1904年)では銀賞を受けるなど、明治期金沢において活躍した。ひろやす米沢弘安は息子。(YT)31やま山きん金お尾ぎん銀じ次ぞう象きち吉がん嵌から唐くさ草もん文こう香Incense burner, design of arabesques,gold and silver inlay1910(明治43)年頃彫金し法隆寺に伝わる国宝《四き騎し獅し子ろ炉かりもんきん狩文錦》にみえる文様を引用した作品。翼馬にまたがり振り向きざまに獅子を射る人物と連珠円文は火屋に、唐草文は金銀銅の象嵌で胴部に、それぞれ配置される。本歌が錦という平面でありながら、立体的な香炉の形態に再構成する趣向は興味深い。山尾次吉は、金沢の白銀師・山尾家に生まれ、当地において輸出工芸を手がけた銅器会社でも職工として制作にあたった。加賀象嵌の伝統をふまえた精巧なわざをもつ名工として、明治から大正にかけて活躍した。(YT)21