タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-

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概要

かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。

73せき関げん源じ司つきあめ月に雨Moon and rain1982(昭和57)年青銅、白銅鋳金第14回改組日展作者は1970年代後半以降、自然界の現象や形態を取り入れた内面的表現を作風とする。具象にも抽象にも傾きすぎない表現が特徴で、本作もそのシリーズに含まれる。上部の半円を月に見立て、その下に雨と星を表す。シンプルな形態の中に、天空の雄大さと静寂を表現している。本作は、金属の種類や技法への試行錯誤を経て完成した。約2年前に同様の作品をアルミニウムで制作したが、色彩的に不十分だったという。そこはくどうで本作では、青銅と白銅による吹分を行った。吹分は、鋳造の際に異種の金属を時間差で流し込み偶然性のある文様を得る技法である。白銅の白い線条を浮き出させて雨を表し、金属がもつそれぞれの特徴を対比させることを試みたという。(YT)74せき関げん源じ司トンネルTunnel1988(昭和63)年青銅鋳金第20回改組日展《月に雨》(cat.no.73)と同じく、自然と人間をテーマとした作品である。精密な造形が可能な?型鋳造を行い、鏡面仕上げの後、泥や砂をのせて焼くことで表面の色彩と文様を表している。半円の外周は、山や自然を意識した揺らぎのある線である。中央にあけられた穴は、シャープな線で人工物たるトンネルを表す。大地を思わせる茶色、森を連想させる黒の色彩は、山深い風景とその雄大さを感じさせる。親しみやすいかたちと文様、あたたかい色調は、見る者に自然と一体になったかのような感覚を与える。(YT)44