タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-

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概要

かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。

2てつ鉄うち打だしかんむりこうろ炉出冠香銘加刕住明珍紀宗幸同刕徳前練浄相味作Incense burner, in shape of crown, iron embossment江戸19世紀鍛金みょうちん明珍は甲冑師の一流派で、その源流は鎌倉時代まで遡る。この一派は幕末に至るまで全国に繁栄し、かっちゅうぐそく甲冑・具足・馬具・鉄工品などの製作を行った。本作は鉄を冠の形に打ち出したもので、見た目に比こうして薄く非常に軽い。頭に載せる「甲」とそこからこじかんざし高くそびえ立つ「巾子」、その間には左右に「簪」、えい巾子から後ろへ伸びる「纓」と呼ばれる附属品が付く。冠は被り物の宮廷装束の一つ。(RN)3こ古どう銅こう柑じ子ぐち口はな花いれ入Vase, with kojiguchi (citrus-like) mouth, bronze中国・明時代15世紀鋳金こどうすず古銅は胡銅ともいい、銅・錫・鉛の合金をさす。はじめは茶褐色だが、時を経るにつれ徐々に黒色となる。こうじぐち柑子口とは、口縁部が蜜柑のように丸く膨らみ、その上がわずかに立ち上がる口造りをさす。渦を巻いたような雷文が、首の中程と高台に整然と打ち込まれ、奥行のある渋い色合いの中でアクセントとなっている。形姿は胴にむかってどっしりと膨らみ、全体に落ち着きのある上品な姿である。高台は裾の部分で外に反っており、安定感がある。古銅の花入は茶の湯の「真行草」において「真」の道具とされる。(AS)4さ砂はり張せい青かい海Tray, sahari alloyぼん盆中国・明時代15世紀鋳金縁に細かい切り込みがあり、輪花をかたどっている。附属の木札に「南蛮青海盆」とあり、ペルシャ・インド・中国あたりから南蛮貿易によってもたらされさはりつちあとたものであろう。南蛮砂張には鎚痕の凹凸のようなさ痕跡が全体にある。それが錆びて斑文をなしていて、砂張の質感を一層ひきたてている。茶人たちはこれを虎肌と称して喜んだというが、本作の地肌も、南蛮砂張らしい雰囲気をもつ。(RN)5