修復について

目次

文化財修復の理念

文化財としての歴史的・芸術的価値をそこなう事なく物理的・科学的に安定した状態にするため、原則として現状維持修理を行っています。経年によって支障が出ない修復材料や技術の選定を行い、未来の世代にも修理が可能であることを目的としています。

また、修復時には文化財が持っているさまざまな情報を得ることができます。修復時にのみ得られる情報もあることから、修復の記録を作成することがとても大切です。

このようなことを基本にし、文化財的価値を守るため様々な条件の中、修復を実施しています。

修復工程

対象によって材質や劣化過程の違いがあるので、一概には言えませんが、一般的に修復は次のような手順で行っています。

1.事前調査

文化財を構成する材料と製作技法、損傷状態などを知るための調査です。原則として非破壊での調査となります。顕微鏡での観察、赤外線の撮影、X線透視撮影などによる構造調査、蛍光X線による材料の分析などがあります。

2.修復方針の決定

文化財的価値と事前調査の総合判断によって修復方針は決定します。その決定は、修復技術者だけで行うことはなく、有識者や美術館、博物館の学芸員などと所有者を加えた三者が十分に協議して行っています。また、修復中に発生する問題や新しい事態にも有識者や学芸員、所有者と協議を行いながら対応しております。

修復方針の決定

3.保存修復処置

事前調査の結果を踏まえて修復材料および修復技術の選定をして実際の修理を行います。基本的に伝統的な技術によって修復を行います。修復材料も長期の保存に実績のある、正麩糊、和紙、漆、膠などの伝統的で安全な天然素材を用いております。伝統的技術や天然素材で修復できない部分については、新しい科学的技術や材料を用いる場合もあります。このように複数の選択肢を有するための知識と、その中からひとつを選ぶ経験値が大切です。

保存修復処置1
保存修復処置2
保存修復処置3

4.修復記録

修復に際しては必ず記録を作成する必要があります。その目的は、修復中にしか得られない貴重な情報や、修復時期、場所、施工した技術や使用材料を記録することにより、次回の修復に生かすことです。

文化財修復の受付について

石川県文化財保存修復工房が修復を行う文化財は下記の通りです。

  1. 国・県・市等の指定文化財
  2. 公共団体が所有する文化財
  3. 美術館・博物館等が所蔵する文化財等
  4. その他上記に準ずる文化財で、石川県文化財保存修復工房運営委員会が必要と認めたもの